産業冷凍用二酸化炭素(その2)

大気に関する科学的研究により大気中のCO2が地球温暖化の重要な寄与因子であることが明らかになっている。大気中のCO2の主な発生源は、化石燃料発電所や、あらゆる種類の乗り物に動力を供給する燃焼機関からの排出である。現在、冷凍システムから排出される可能性のあるCO2量は規制されていない。

すべての自然冷媒のオゾン層破壊係数はゼロであり、また、これらの冷媒の地球温暖化係数はゼロもしくは非常に小さい。 CO2の地球温暖化係数は1.0である(定義上この値に設定されている)。これに対して、CFCおよびHCFC冷媒の値は一般に1,000を超える。

CO2の物理的特性

CO2は特異な物理的特性を持つ。熱力学的蒸気圧縮冷凍サイクル、コンポーネント設計、システム設計、および運転は、表1に示すCO2の特性によって制約を受ける。CO2の凝固点(三重点)は-56.6 °C(-69.8 °F)、NH3の氷点は -77.7 °C( -107.8 °F)であり、両者は近傍にある。
ただし、CO2の臨界温度は31.0 ℃(87.8 °F)であり、NH3の臨界温度が132.3 ℃(270.1 °F)であるので、NH3よりかなり低い。 CO2の凝固点(三重点)はNH3と大差ないが、CO2の臨界温度はNH3のそれよりかなり低い。

 現在生産が削減されつつあるHCFCであるR 22は、かつては産業システム用の一般的な冷媒であった。冷媒R 507AおよびR 404Aはそれぞれ共沸混合物および混合物であり、いずれもHFCである。これらは、GWPが高いことにより冷媒としては先が読めない。 NH3は、その良好な熱力学的特性を持つものの、一方で毒性および中程度の可燃性を含むデメリットを有する。これらの理由から、CO2は工業用冷凍システムの多くの用途にとって考慮に値する冷媒として考えられている。

図1は、CO2およびNH3を含むいくつかの冷媒についての飽和圧力対飽和温度のグラフであり、これにより以下のことがわかる。

  • CO2三重点絶対圧力5.18 bar(75.1 psi)は大気圧を超えている。
  • CO2の臨界点温度は、典型的な設計凝縮温度より低い。

なお、CO2は低温冷媒(低温では大気圧以上)であり、NH3は中温冷媒である。 CO2状態図は図2に示されており、本質的な特徴のみが示されている。図の上で、CO2の潜熱は飽和液と飽和蒸気線の間の水平距離によって示される。 CO2の潜熱はR-22との比較においてはかなり高いが、NH3の潜熱ほどには高くはないことが明らかである。また、CO2の圧力-エンタルピ線図は、CO2が高圧低温において存在することを示している。臨界点はわずか31.0°C(87.8°F)である。

図3および図4は、それぞれp-h(圧力-エンタルピ)軸上のCO2およびNH3についての飽和液線および飽和蒸気線を示す。工業用冷凍にCO2を適用するとき、上述のこれらのグラフと特性は、重要で実用的な結果をもたらす。

CO2の圧力が高いため、大気や水がシステムに侵入することはほとんどない。また、CO2の吸込蒸気密度が高いため、コンプレッサは小型であり、エバポレータは優れた性能を発揮する。さらに、CO2の圧力-温度曲線の傾きが同じ温度変化に対してはるかに大きな圧力変化を示すことを確認される(図1)。
言い換えると、CO2の圧力降下ははるかに小さい温度降下をもたらす。例えば、-42.8°C(-45°F)のCO2飽和蒸気が0.07 bar(1.0 psi)圧力降下すると、これに伴い温度は0.22°C(0.4 F)降下する。

Fig.3 Pressure-enthalpy diagram for CO2
Fig.4 Pressure-enthalpy diagram for NH3
出典: eJARN