EUの諮問機関がヒートポンプ、ルームエアコン、チラー及び冷凍機器へのGWP 5以上の冷媒使用禁止を求める

NPO法人環境エネルギーネットワーク21主任研究員 石橋直彦

EUのFガス規制案に対する意見を公表している欧州の主要諮問機関である欧州経済・社会委員会(EESC)が、2030年時点で新しく製造するヒートポンプ、ルームエアコン、チラー及び冷凍機器に用いる冷媒のうちGWPが5以上のもの全てを禁止するよう求めている。この機関の意見は、欧州委員会、欧州理事会及び議会の間の協議で検討される。このように同機関は欧州の意思決定プロセスにおいて重要な役割を果たしている。この意見書は、Fガス規制の報告者であり、またリトアニア消費者団体連合の代表者であるKęstutis Kupšys氏が起草し、意見書は賛成140、反対1、棄権6で採択された。

EESCは、R404Aのような高GWP冷媒を用いることへの規制、全ての技術にわたるGWP 150の上限規定、EU加盟各国が、GWPの非常に小さい冷媒、可能な場合、Fガスを用いない冷媒を使うことにより環境保護を促進することへの支援、を要求している。EESCがEUのFガス規制案を歓迎しているにもかかわらず、「気候変動に関する行動においてEUが世界的なリーダーシップを維持する」ためにもっと熱意を注ぐことができると考えられている。欧州委員会は、高GWPのHFCを使い続ける代わりに低GWPの自然流体(冷媒)を促進することにより直接的な気候への影響を大きく減らすために、本規制の改定は好機であると強く主張している。

EESCは、「中間媒体(2次冷媒)を用いることを避け、Fガスを用いない低GWP冷媒に直接変えるのを促進することがとても重要である。EU市場は、これが実現可能であり、EUが模範を示して先導すべきである。」とも述べている。EESCは、リサイクル、再生、メンテナンス及び修理をより複雑にしているように、たとえそれが低GWP冷媒であっても、Fガス混合冷媒を用いて運転することの課題への注意をもうながした。

EUのREPowerEU計画(注1)のヒートポンプの市場への展開が、Fガス規制によって阻まれるという懸念に対し、EESCは「根拠がない。これは産業の生産能力増加によるものであり、主として自然冷媒に基づく。」と決めつけている。

注1 REPowerEU計画
欧州のロシア産天然ガス依存からの早期の脱却を目指し、エネルギーシステム全体の迅速な転換を図る計画をいう。


政策の3本柱
①省エネ
②エネルギー調達先の多様化
③再エネ移行の加速





REPowerEUについては、
https://www.eu-japan.eu/sites/default/files/publications/docs/EU-Green-Deal14.pdf
などを参考にしていただきたい。


出典:R744.サイト
https://r744.com/eu-advisory-body-calls-for-2030-ban-of-gwps-over-five-for-heat-pumps-room-acs-chillers-and-refrigeration