さまざまな業務用冷凍冷蔵製品及び自動販売機への炭化水素など自然冷媒利用の需要は継続的に増加している。これは、欧州のF-gas規制によるR134aやR404AのようなHFC冷媒の段階的廃止がごく間近に迫っていることにも起因している。
多くの小売業者は低GWP冷媒の選択肢として二酸化炭素又は炭化水素ベースのシステムを用いているが、これらが最適な解決策になると確信していない向きもある。販売業者にとって極めて重要なことは、低GWP冷媒を使用することだけでなく、代替製品の性能を維持することである。消費電力の増大による間接的CO2排出量の増加が、冷媒のGWPを下げることによるCO2排出削減量を大幅に相殺してしまうこともある。遷臨界CO₂システムが、多く販売業者にとっては一般的な解決策であるが、詳細な調査によりこのシステムは新しい性能基準や安全基準を満たしていないと結論付けられた。さらに、R-404AやR-407Fなどの一般的なHFCと類似の動作特性を求めて、既存のシステムへのレトロフィットに使用されているR-448AやR-449AなどのA1 (不燃性)HFO混合冷媒の可能性が探られた。これらの選択基準により、R454AとR454Cの2つの冷媒が要件を満たす可能性があることがわかったが、これらの冷媒はいずれもISO 817のA2L、すなわち微燃性に分類される。
現在のところ、自販機の分野でのR600aやR290といった燃焼性の高い冷媒の使用は、非常に高い危険性を伴うと考えられる。これは、自販機に内蔵される電気部品が、通常運転中でもアーク放電を発生する可能性があるからである。このため、安全性が著しく損なわれる。
安全性リスクが非常に高い自販機の分野でR290(プロパン)のような冷媒が使われる理由は以下のとおりである。
- R290は商用の自然冷媒であり、数十年にわたり実績がある。
- 熱力学的特性に優れている。
- 無毒であり、ODPが0(ゼロ)、GWPが非常に小さい(約3)。
- 化学合成物質でないので環境に及ぼす長期的リスクが考えられない。
- 自然物質であるので特許権が無く、したがって手ごろな価格で誰でも入手できる。
しかしながら、R290は安全等級が3に分類される高い燃焼性を持ち、安全性に関するリスクが高いため、業務用冷凍冷蔵機器や、特に自販機の分野での使用には大きな障害がある
※当記事は下記資料の抄訳です。