NPO法人環境エネルギーネットワーク21主任研究員 石橋直彦
欧州ヒートポンプ協会EHPAのウェブサイトに欧州の冷媒関連政策が記されているので、他の情報と併せて以下にまとめた。
Fガス規制
強力な地球温暖化をもたらす温室効果ガスであるフッ素化ガス(Fガス)の排出を抑制するため、2006年に“Fガス規制”が公布・施行され、冷媒漏洩防止や回収義務などが定められた。この規制は、より環境負荷が小さい代替ガスを用いることが可能な機器に対してFガスを使用することを禁止するとともに、機器の使用を終えた時には冷媒ガスの回収及び適切な保守を義務付けている。また、2015年1月1日に割当制度(HFCの供給量制限)が導入され、市場への供給が段階的に削減されることになった。この規制は2015年からEU内で販売できるFガスの総量を規制し、2030年には2014年のレベルの5分の1に段階的に削減することを規定している。
さらに2024年3月11日に新たなFガス規則(EU 2024/573)が発効しHFCの段階的廃止(2030年までに95%削減、2050年までに全廃)や、一部製品でのFガス使用禁止、低環境負荷な冷媒への移行の促進などが盛り込まれ、規制が大幅に強化された。この規制は、冷却、空調、ヒートポンプなどの機器に影響を与え、関連する製品の販売やサービスの提供、使用、廃棄、そして関連する作業者の資格にも影響する。
REPowerEU (European Commission 2022a)計画
ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた困難な状況と世界的なエネルギー市場の崩壊に対応して、欧州委員会ECはロシア産化石燃料の輸入を段階的に廃止するためREPowerEU計画を実施している。REPowerEU計画では化石燃料への依存を軽減する方策として太陽光、風力及びヒートポンプの利用拡大を図っており、EU が2022年から2026年の 5 年間で 1000 万台の温水ヒートポンプを導入することで、1.2 BCM(12億立方メートル)のガス消費量削減が可能になると試算している。他の種類のヒートポンプ機器を含めると、2026年までに約2,000万台のヒートポンプ、2030年までにEU全体で約6,000万台のヒートポンプが設置されると、EHPAは試算している。
パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)
EHPAは、欧州化学物質規制(REACH)に基づくパーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物 (PFAS) の制限に関する提案に関して欧州化学機関(ECHA)が開始したパブリックコメントに応じ、FガスをPFAS制限案に含めるべきではないとしている。FガスはすでにFガス規制によって適切に規制されており、気候変動対策とエネルギー目標の達成に不可欠なヒートポンプ技術の普及を妨げるべきではないというのがEHPAの主張である。EHPAは、PFASの環境影響を認識しつつも、規制は証拠に基づき、比例的であるべきであり、ヒートポンプのような重要な環境技術の利用可能性を確保するための適切な移行期間と除外規定が必要であると訴えている。
参考資料:
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)の冷媒関連政策は以下のサイトに述べられている。
https://ehpa.org/policy-2/refrigerants-related-policies/
PFASに関連するEHPAの主張は以下のサイトに述べられている。
https://www.ehpa.org/wp-content/uploads/2022/12/20201221_EHPA-position-PFAS_FINAL.pdf